2011/07/27

『1階壁_外壁型枠と鉄筋配筋』

1階壁 外壁型枠と鉄筋配筋


1階床の打設後、1階壁の外壁側型枠と鉄筋配筋の組み立てが進められた。
奥から商店街をみる。
壁が立ち上がってくると、いよいよスケール感が明確に把握できる。
敷地が狭小地で隣地建物との離れがわずかでもあるため、先に外壁側の型枠を立込み、鉄筋を配筋して、一旦配筋検査を行う。検査を終えると、返し型枠(内壁側の型枠)を組む。すなわち外側から内側に順次施工していく流れとなる。





コンクリート打放し仕上



鉄筋コンクリート造とは、圧縮に強いコンクリートと引張りに強い鉄筋を組み合わせた、それぞれの性質を補い合う躯体構造物である。また構造上の観点だけではなく意匠上もコンクリートの打放しは美しいものだ。
コンクリート打放し仕上げは見た目には美しいが、内外を打放し仕上げにするのは難しい。これは断熱材の扱いがあるからである。一般には内断熱または外断熱として、外側または内側の一方を打放しとし、もう一方は断熱材のうえ仕上材で仕上げる。
今回の計画では、基本的には外壁ファサード面、そして室内内壁全般をコンクリート打放し仕上げとしている。




断熱


内外打放しの建築は一般に断熱材がないと思ってよいだろう。(北海道の安藤忠雄設計、水の教会などは、内外打放しだが分厚い壁体内に断熱材が埋め込まれている。) 断熱材のない設計をするということは、コスト上ということもあるが、断熱環境が悪くなるため通風や断熱・遮熱など、より室内環境に気遣った設計が必須となる。
かつて勤務した設計事務所の入居していたテナントビルは内外打放し、断熱材のない建築だった。立地や室内環境設計にも問題があったと思われるが、冬は極寒、夏は灼熱、冷暖房の効きも半日はかかったように記憶している。
こういった経験から今回は基本的に断熱材を使用することとし、外断熱仕様とした。外断熱の具体的仕様は、コンクリート打込み型枠兼用となるGRCパネルの使用である。
コンクリート打込型枠兼用パネル。
型枠と打設後イメージ






















GRCパネルとはGRC(ガラス繊維強化セメント)と断熱材(スタイロフォーム)が一体となったパネルで、施工方法としてはコンクリ打設時にこのパネルを外側の型枠として使用し、そのまま型枠が外壁になるというものである。断熱効果を期待したい。
 
写真左が室内側、断熱材と外壁躯体のための鉄筋が見える。
写真右は外部側、グレーのパネルがGRCでこれが外壁になる。

2011/07/21

『家族をつくった家』

家族をつくった家


インデックスコミュニケーションズから刊行されている建築家の絵本シリーズ「くうねるところにすむところ」第3巻、芦原太郎著『家族をつくった家』は私にとってひとつの教科書でもある。
私が大学を卒業後、実務を学んだ設計事務所が芦原太郎建築事務所であり、そして私が独立後最初に頂いた仕事が、この絵本『家族をつくった家』の作画依頼だった。その後の人生に少なからず影響を与えたこの仕事は、太郎氏だけでなくその父親で建築家の芦原義信氏(銀座ソニービル等の設計で知られる巨匠)の建築に対する思想、理念などに触れられる貴重な体験だった。絵本の舞台は芦原義信設計の自邸だが、住宅とは、そして生き方とは、ということに対してのひとつの解がそこにはある。





自邸とは


この絵本にでてくる芦原自邸は、建築としてはごくごく控え目に佇んでいる。建築家が表現者として、また実験場として自邸を扱ってきたことと比べると、この家は一見‘普通’な佇まいである。しかし建築家の住まうことへの思想は確かにそこに存在し、結果的には他の建築家同様、実験場としての自邸がここにも存在している。
15坪から始まった平屋の小さな家は、家族の成長とともに少しずつ増改築を繰り返し、やがでは2階建てとなり、さらにはサウナや露天風呂、そして雑木林が育つ家に成長した。建築に合わせて人が住まうではなく、人に合わせて建築が進化する、という概念である。この家には確かな豊かさや愛情が溢れている。建物が主役ではなく、あくまでも人が主役であり、人とその生活の豊かさのための舞台として建築は控え目に佇んでいる。

大震災を体験した今の私たちは、なおさらに豊かさや幸せとは何なのかを真剣に問われているように思うが、建築の役割、そしてその力を私も引き続き考えていきたい。









この絵本の物語を端的に記された記事が、7/20発売の「Ku:nel(クウネル)vol.51号」(マガジンハウス)に特集されている。是非一読頂ければと思う。


2011/07/05

『基礎・1階床_コンクリート打設 その後』

コンクリート乾燥


コンクリート打設後、1週間程経って現場に赴く。泥のような茶色だった生コンはすっかり乾燥して美しい灰色になっていた。
乾燥後の表面
こちらは打設直後のコンクリ表面。泥のような茶色。






















1階立上り配筋


基礎・1階床の打設後、休む間もなくいよいよ建物が立ち上がってくる。1階立上り、壁の配筋が始まっていた。今回の計画では、各階とも短手(妻側・梁間)方向に門型アーチが複数連続する構成だが、その門型アーチの袖壁配筋が見える。
敷地奥から商店街側を見る。




















この袖壁によってできる、視線の遮られる場所や壁に囲われた居処のような場所が、既に感じることができた。
これから袖壁配筋、そして長手(桁行)方向の壁の配筋が、順次進められる。